タムナスさんの家の描写も優れていますが、食事もまたおいしそうなんです。でもそれ以上に、タムナスさんの話し上手なこと!
ドワーフにニンフといった、ギリシャ神話のおなじみのキャラクターたちの野性的で魅力的な生活ぶり。ラノベに登場してもおかしくないぐらい、個性的なキャラクターの描写です(もっとも、ラノベの傾向じゃないとは思うけどね)。
ファンタジーってこうだよね、というのがもろに判る描写の数々。
想像するだけで、楽しくなります。
そして、外国でのファンタジーと、日本の古典との違いとを、考えてしまったりもします。
古代の自然を描写する、という点で枕草子は、わたしにはファンタジーです。
そこから見ると、このタムナスさんの話は、野趣あふれていて、日本人の「柔らかさ」とは違ったなにかを感じることでしょう。
そんな野趣あふれる話をした後、タムナスさんは、自分が魔女の手先で、ひとさらいをするためにルーシーを歓迎したのだと打ち明けます。
その際、タムナスさんは自分の座っている椅子の床が池になりそうなぐらい泣くんです。
―――トムとジェリーみたい。
猫のトムは、ジェリーにしてやられ、涙涙で床が池になるシーンがよくありましたよね。
児童小説でアニメをやるとは思ってなかった(笑)
そのコミカルなシーンの後での白い魔女の恐怖支配の話。
そして、ひとさらいをする自分の話をするタムナスさん。
ナルニアを冬にした魔女に仕えており、人間の子を彼女に渡すのが彼の仕事―――。
ルーシーは、必死で「帰して」と言い、タムナスさんもそれに賛同します。
英雄の決断です。