というわけで、帰ってきたルーシーは、ほかのきょうだいたちに、冒険譚を話して聞かせるんですが、きょうだいは「作り話だ」として取り合いません。
間の悪いことに、衣装だんすまでがナルニアと通じなくなっている。
ウソつきだとみんなに思われて、ルーシーは泣いてしまいます。
ここでC.S.ルイスが巧みだと思うのは、『ナルニアへの扉は、いつも開いているとは限らない』というメッセージを含ませていると言う点でしょうか。
一時期ラノベの転生ものといったら、事故に遭ったら必ず異世界に行き、必ず冒険をする(またはスローライフを楽しむ)のがストーリーのテンプレートになってました。
主人公が単数で、しかもすぐに没入してほしいという作家の工夫でそうなったのでしょうが、個人的にはこのルイスのやり方も、悪くないと思います。特に、エドマンドとルーシーの関係を見る限りでは、エドマンドのいじめっ子ぶりがなんとも嫌味で、お友達になりたくないタイプなものですからなおさらです。
さて、ものの本では、ルイスは人間の「傲慢」こそが一番の罪だと考えていたそうです。
エドマンドは傲慢という点では人後に落ちないキャラクターですが、そういう人間こそが救われる価値があるのでしょうか。
ともあれ、エドマンドはそのあと、ナルニアにやってきます。
ルーシーのあとを追いかけたんですが、やっぱり街灯を見て呆然としている内に、白い魔女と遭遇します。
この魔女こそが、ナルニアを永い冬に閉じ込め、恐怖で支配している悪の権化。
エドマンドの持つ、悪の磁力のようなもので呼ばれたのかも。