ライオンと魔女
エドマンドのためにアスランは命を奪われます。その際のアスランのかなしげな様子と、魔女の手下どものあざける様子は、まさに聖書のイエスとその敵対者の記事を彷彿とさせます。つらいシーンです。 しかしもちろん、この話はこれで終わりではありません。ア…
さて、いよいよアスランが近づいてきたため、予言が成就するかも知れず、エドマンドに利用価値がなくなってきたと考えたジェイディスは、エドマンドを殺そうとします。エドマンドが木にくくりつけられてナイフを振り上げられたまさにその瞬間、救助隊が現れ…
この『ナルニア国ものがたり』は、ほとんど血みどろの戦いは出てきませんが、この章に限って言えば、ピーターがオオカミと戦ってこれと勝利する話が出てきます。 ほんの子どもが、剣を取って戦い、敵に勝利する。 ありそうにない話ですが、描写がしっかりし…
春が来たので、白い魔女から追いつかれる気遣いがなくなり、ゆっくりと石舞台に向かう一行は、ついにアスランと出会います。そこには、善でありながら同時に恐怖の対象であるライオンが、テントのなかで待っていました。 エドマンドのことを聞かれたピーター…
エドの氷のような心が変化するのと同時ぐらいに、ナルニアにも春の気配が忍び寄ってきます。あちこちに川が流れ始め、ヒメリュウキンカにスノードロップ、サクラソウなどといったイギリス北部の春の花が咲き誇り始めます。 このあたりは、日本の季節の花と比…
エドは苦労して魔女の館にたどり着いたのに、帰ってきたのは冷淡な扱いでした。 ひからびたパンに水を与えられただけだったのです。 たいがいの小説は、苦労したらそのぶん報われるのがセオリーなのですが、このファンタジーはそう甘くない。せっかく情報を…
サンタクロースは、「女性を巻き込む戦いは見苦しいものになる」と言って、戦闘をしたがるルーシーたちをたしなめます。このあたり、C.S.ルイスの時代背景とか、あるいは『ナルニア』の世界観などを感じることが出来ます。 対照的な例を挙げるなら、現代児童…
9章でエドが石のライオンに恐怖し、それが石像だと知ってアスランだと思っていたずら書きをするシーンがあります。おちゃめなシーンです。 そして10章の冒頭では、ミセス・ビーバーがのんきに旅行に食べ物を持って行こうとするシーンが挿入されています。 こ…
きょうだいを裏切ると決めて外へ飛び出したエド。著者は、エドのことをかばっています。 エドマンドは、ターキッシュ・ディライトが食べたくて、王子に(やがては王に)なりたくて、自分のことを「汚いやつ」と呼んだピーターに仕返しをしたかっただけなのだ…
エドマンドが裏切ったことを知った一同は、情報がどこまで漏れているか確認します。アスランが来たことが魔女に知られたら大変だというビーバー。 希望的観測を述べるピーターに、ルーシーが、「アスランを石にしちゃうんじゃないかとエドが言った」 と指摘…
タムナスさんが、白い魔女に捕らえられて石に変えられているかもしれない、という話から、アスランの正体(ライオン)、人間がナルニアの王座に就くことなどが判明するんです。その際、ビーバーさんは含蓄のあることばを告げます。 「何しろ人間になろうとし…
というわけで、ビーバーさんのところでミシン仕事をしていた奥さんが、ミスター・ビーバーの獲ってきた淡水魚を料理して、みんなで食べることになるんですが、これがまた美味しそうなんですよね~。魚のフライはわたしも大好きです! C.S.ルイスも好きらしい…
『ライオンと魔女』はシリアスな場面が多いのですが、笑えるシーンもあります。 このあとでビーバーに連れられて一行がビーバーのダムを見るんですが、スーザンが儀礼的に、「なんてすてきなダムなんでしょう!」と言うと、顔につつましい表情を浮かべていた…
コマドリが飛び去ったあとビーバーが現れ、タムナスに託されたハンカチを見せて味方だと言うのです。そしてビーバーは、アスランが到着していると告げます。 そのとき、子どもたちの中でさまざまな感情がわきおこるのですが、ここのところの描き方がとても素…
タムナスに起こったおそろしい出来事を目のまえに、まごまごしていたペベンシーきょうだい。そこへ現れたのは、コマドリでした。 ルーシーは、コマドリを見つけて「あとをつけましょう」と言い出します。 どっちの側かわからない、罠にはめようとしてるかも…
ピーターがキツイひとことを言って、エドマンドが気取りやのいい子ぶりっ子めと心の中で反発する気持ちは、わたしにはひとごとではありません。母からいつも、キツイことを言われてましたからね。心の柔らかい子どもに対して、あんまりな言い方。わたしはエ…
冬のナルニアに入り込んだピーターたちは、スーザンが「この衣装だんすの毛皮を借りましょう」という案に賛成します (持ち出すわけじゃないという理屈は笑える)。 そして、エドマンドはドジな失敗をします。ごっこ遊びをしていたと主張していたのに、ここ…
カーク教授のフォローのおかげで、ルーシーはエドのいじめから、ピーターがまもってくれるようになりました。 衣装だんすの話はタブーになり、それでこの話はおしまいか、と思われたのですが、実はそうはなりませんでした。 その理由は、歴史的建物だったカ…
帰ってきたルーシーとエドマンドは、ナルニアのことを再び兄と姉に話しますが、ここでエドマンドが裏切り、ごっこ遊びをしていたと言い出します。 そのためピーターもスーザンも心を痛め、ルーシーの頭がどうにかなったに違いないと、カーク教授に全てを打ち…
帰る道がわからない、というエドマンドに、ジェイディスは街灯の道を教え、自宅の城も教えます。 ここで不思議に思う人もいるでしょう。ジェイディスは、なぜ人間界に行く道を知っていながら人間界に侵入してこないのか。 そのあたりは、『魔術師のおい』で…
というわけで、白い魔女ジェイディスと出合ったエドマンド。 最初、ジェイディスは、このエドマンドを殺そうとするのです。 そんな人のお菓子を食べるんですから、エドマンドというのはほんとに頭が悪いというか……、間が抜けた人間です。 とっさに、その場を…
エドマンドのもとへ現れた魔女の名は、ジェイディスと言います。 この本の中にはちょっとしか出てきませんが、第6巻にあたる『魔術師のおい』で、その名が出てきています。(この魔術師のおいが、のちのカーク教授という話の展開になってます)。 この魔女…
というわけで、帰ってきたルーシーは、ほかのきょうだいたちに、冒険譚を話して聞かせるんですが、きょうだいは「作り話だ」として取り合いません。 間の悪いことに、衣装だんすまでがナルニアと通じなくなっている。 ウソつきだとみんなに思われて、ルーシ…
タムナスさんの家の描写も優れていますが、食事もまたおいしそうなんです。でもそれ以上に、タムナスさんの話し上手なこと! ドワーフにニンフといった、ギリシャ神話のおなじみのキャラクターたちの野性的で魅力的な生活ぶり。ラノベに登場してもおかしくな…
巡り会ったタムナスと名乗るフォーンから、家に来ないかと誘われるルーシー。 おもてなしの料理として、瀬田貞治先生は「小イワシ」の油漬けと訳していましたが、これはいわゆる「オイル・サーディン」(土屋京子訳)のことで、わたしは最初なんのことかさっ…
ナルニアでルーシーは街灯を見つけます。 森の中に街灯がある。もちろん、現代日本なら、あり得る状態。 山の一軒家にも、電気が通っている時代ですからね。 でもこの話は、戦時中の英国の話です。 皓然ときらめく街灯が、森の中に1本立っている。 電気も、…
折からの雨でせっかくの外出がボツになり、屋敷探検をすることになったペベンシーきょうだい。 とある部屋でルーシーは、衣装だんすを見つけ、中に入り込みます。 その際、樟脳玉(しょうのうだま)が転がった、という描写が、なにげなく書いてあるんです。…
この『ライオンと魔女』では、 ピーターが長男、スーザンが長女でエドマンドが次男、末っ子がルーシー ということになってますが、最初 瀬田貞治先生の訳を読んだときはそれが飲み込めず、なんどか読み返して納得しました。 英語圏では、長男や次男には、あ…
一般にラノベでは異世界に行ってしまうのは主人公ひとりですが、『ナルニア国物語』では四人のきょうだい共々。 ルーシーが、どちらかというと「おとなしめ」で「常識派」なのに対して、エドマンドはとても魅力的なキャラクターです。何かというとすぐ反発す…
『ナルニア国物語シリーズ』は、その頃わたしが通っていた教会の図書室に置かれていました。 両親が大人の礼拝をしている間、わたしは第一巻の『ライオンと魔女』を読むことにしました(子ども礼拝は、午前中の早い時間に行われます)。 冒頭、四人のきょう…